「すべてのこと、特に自分自身に関わることについては友に相談せよ。自己愛が判断を曇らせるところに、友の助言は有益となりうる」

- 紀元前1年頃~紀元65年
- ローマ帝国出身
- 哲学者、政治家、劇作家、倫理思想家
- ストア派哲学の代表的人物として知られ、道徳と内面の自由を重視する思想を展開。皇帝ネロの教育係を務めた後、政治から退き著述に専念し、多くの書簡や悲劇作品を通じて後世の倫理思想やキリスト教思想にも影響を与えた。
英文
“Consult your friend on all things, especially on those which respect yourself. His counsel may then be useful where your own self-love might impair your judgment.”
日本語訳
「すべてのこと、特に自分自身に関わることについては友に相談せよ。自己愛が判断を曇らせるところに、友の助言は有益となりうる」
解説
この言葉は、自分自身に関する判断においては、主観や欲望、自己評価の偏りが入り込みやすいため、信頼できる他者の視点が不可欠であるというセネカの慎重かつ実践的な知恵を示している。ストア派の哲学では、理性によって正しい判断を下すことが人間の徳の核心であるが、自己に対する評価ほど理性が揺らぎやすい領域はないとされる。だからこそ、自らの内面から離れた客観的な助言をくれる「友」の存在が、真の判断を支える補助となる。
セネカにとって友情とは、単なる情緒的なつながりではなく、徳を磨き合い、相互に高め合うための哲学的関係であった。この名言における「相談せよ」という助言は、自己欺瞞や感情的誤謬から自らを守るための防壁として、他者の理性的な洞察を活用することの重要性を示している。自己愛(self-love)は往々にして、過信、言い訳、欲望の正当化へとつながる危険があるため、それを抑える外部の理性が必要なのだ。
現代においても、重大な決断や自己に関する問題は、時に他者の意見を取り入れることで新たな視点や冷静さを得ることができる。セネカのこの言葉は、自己中心性を乗り越え、他者と共により良い判断に到達しようとする謙虚な知性のあり方を示しており、信頼と理性を土台とした友情の尊さを再認識させてくれる。自分のことほど見えにくい――だからこそ、賢者は友を求めるという普遍の知恵がここにある。
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