「それを自然と呼ぼうと、運命と呼ぼうと、幸運と呼ぼうと、それらはすべて同じ一なる神の名である」

ルキウス・アンナエウス・セネカの名言
ルキウス・アンナエウス・セネカの名言
  • 紀元前1年頃~紀元65年
  • ローマ帝国出身
  • 哲学者、政治家、劇作家、倫理思想家
  • ストア派哲学の代表的人物として知られ、道徳と内面の自由を重視する思想を展開。皇帝ネロの教育係を務めた後、政治から退き著述に専念し、多くの書簡や悲劇作品を通じて後世の倫理思想やキリスト教思想にも影響を与えた。

英文

“Call it Nature, Fate, Fortune; all these are names of the one and selfsame God.”

日本語訳

「それを自然と呼ぼうと、運命と呼ぼうと、幸運と呼ぼうと、それらはすべて同じ一なる神の名である」

解説

この言葉は、世界を支配する原理や力に対するセネカの一元的な理解を示しており、ストア派の神観を象徴する名言である。セネカは、宇宙の背後にある理法を「自然」「運命」「幸運」など様々な名で呼び得るが、それらは本質的には同じものであり、全体としての秩序と必然を示す一なる理性(ロゴス)であると捉えていた。これは、多様な現象の背後にある普遍的な力を一つの神的存在と見なすストア派的汎神論の表明である。

セネカにとって神とは、人格神ではなく、理性に満ちた自然の秩序そのものであり、人間の運命を超越的に支配する法則でもある。この名言は、人間がどのような言葉で語ろうと、すべての出来事は一つの統一された原理に基づいて展開しているという哲学的確信を語っている。つまり、多名の神を崇めるのではなく、現象の多様さの中に一貫した理法を見出すことが、真の理解と生き方の出発点である

現代においても、自然の摂理、偶然の出来事、運命的な巡り合わせといったものをどう捉えるかは人それぞれだが、セネカのこの言葉は、それらの違いを超えて、世界に一貫した秩序と意味を見出そうとする姿勢の重要性を教えてくれる。名称に惑わされず、本質に目を向けよ――この名言には、混沌の中にも統一された真理を見出そうとする哲学者の静かな強さが宿っている。

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