「家を出たときと同じ精神の状態で帰宅することは決してない。心の平穏を得ていたところに何かが乱れ、追い払っていたものが再び姿を現す」

- 紀元前1年頃~紀元65年
- ローマ帝国出身
- 哲学者、政治家、劇作家、倫理思想家
- ストア派哲学の代表的人物として知られ、道徳と内面の自由を重視する思想を展開。皇帝ネロの教育係を務めた後、政治から退き著述に専念し、多くの書簡や悲劇作品を通じて後世の倫理思想やキリスト教思想にも影響を与えた。
英文
“I never come back home with the same moral character I went out with; something or other becomes unsettled where I had achieved internal peace; some one or other of the things I had put to flight reappears on the scene.”
日本語訳
「家を出たときと同じ精神の状態で帰宅することは決してない。心の平穏を得ていたところに何かが乱れ、追い払っていたものが再び姿を現す」
解説
この言葉は、人間の心が常に動揺し、安定を保つことの困難さを深く描いている。セネカは、精神の平穏(アタラクシア)を人生の目的としながらも、それを日常の中で保つことの難しさを自覚していた。家を出て社会と接するとき、他人の言葉や出来事が心の内なる秩序を乱す要因となりうる。この名言は、徳を求める者であっても、完全な心の支配には絶え間ない努力が必要であるという教訓を伝えている。
セネカは、自省と訓練によって感情を制御しようとしたが、現実の生活の中では再び怒りや不安、虚栄心といったものがよみがえることを率直に認めている。この誠実な姿勢は、ストア派が説く理想の賢者像と現実の自己との間に生じる葛藤を浮き彫りにする。理性によって感情を克服するという哲学的理想が、常に日常の摩擦と試練にさらされることを、彼は身をもって語っているのである。
現代の生活においても、私たちは社会の喧騒や人間関係の中で、ようやく築いた内面の平穏を簡単に失ってしまう。この名言は、精神的均衡を保つには、継続的な自省と鍛錬が不可欠であるという真理を思い出させてくれる。心の平穏とは、獲得するものではなく、絶えず守り続けるものである。
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