「心の養いは、身体の食物と同じくらい必要である」

紀元前106年1月3日~紀元前43年12月7日
ローマ共和国出身
政治家、弁護士、哲学者、雄弁家
共和政ローマを代表する弁論家・思想家として知られ、ラテン文学とローマ法の発展に多大な影響を与えた。政治的混乱の中で共和政の理想を擁護し、著作を通じて西洋政治思想と修辞学に大きな遺産を残した。
英文
”Cultivation to the mind is as necessary as food to the body.”
日本語訳
「心の養いは、身体の食物と同じくらい必要である」
解説
この言葉は、精神や知性の成長は、肉体にとっての食事と同じく、日常的かつ不可欠な営みであるというキケロの教養観を端的に表した格言である。彼は、人間が理性を持つ存在である以上、その精神を育て、磨き続けなければ本来の人間性を失ってしまうと考えた。つまり、精神的な鍛錬や教養は生きるための贅沢ではなく、生きる上での本質的な要素であるという認識がこの言葉には込められている。
この思想は、キケロの著作『義務について(De Officiis)』や『老年について(De Senectute)』などにおいて繰り返し見られるものであり、読書・対話・哲学の探究などを通じて、知性と道徳をともに育てることが人間にとって最も価値ある営みであると説かれている。彼にとって、「無知」は徳の欠如であり、教養なき生は、方向を失った舟に等しいとされた。
現代においてもこの格言は、教育の意義、生涯学習の重要性、情報過多社会における知の選別といったテーマに通じている。物質的な豊かさが満たされても、精神の空虚は教養によってしか埋められない。キケロのこの言葉は、生きるためには心にも「糧」が必要であり、それを与えるのが知識、思索、芸術、哲学といった精神の栄養であるという普遍的な真理を伝える、永遠に色褪せない知の名言である。
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