「年寄りが金を埋めた場所を忘れたなんて話は聞いたことがない!老人は自分に関心のあることは覚えているのだ――裁判の日取りや、借金の相手や貸した相手の名前はしっかりと」

マルクス・トゥッリウス・キケロの名言
マルクス・トゥッリウス・キケロの名言

紀元前106年1月3日~紀元前43年12月7日
ローマ共和国出身
政治家、弁護士、哲学者、雄弁家
共和政ローマを代表する弁論家・思想家として知られ、ラテン文学とローマ法の発展に多大な影響を与えた。政治的混乱の中で共和政の理想を擁護し、著作を通じて西洋政治思想と修辞学に大きな遺産を残した。

英文

”I never heard of an old man forgetting where he had buried his money! Old people remember what interests them: the dates fixed for their lawsuits, and the names of their debtors and creditors.”

日本語訳

「年寄りが金を埋めた場所を忘れたなんて話は聞いたことがない!老人は自分に関心のあることは覚えているのだ――裁判の日取りや、借金の相手や貸した相手の名前はしっかりと」

解説

この言葉は、老年における記憶力の衰えを単なる生理的現象と見るのではなく、興味関心の有無が記憶保持に大きく影響するという、キケロの鋭い観察と機知に満ちた諷刺を表す格言である。彼は、高齢者であっても、自らにとって重要なことや利益に関わることに対しては、極めて明確に記憶を保持していると指摘し、「年齢=忘却」という常識的偏見を否定している

この見解は、キケロの著作『老年について(Cato Maior de Senectute)』に登場し、老年の価値や能力を擁護する議論の一部として語られている。この言葉は、人間の記憶とは意志と関心によって大きく左右されるものであり、老いによってすべてが失われるわけではないという実践的な知見に基づいている。また、金銭や裁判といった「利害に関わる事柄」に対する記憶が明瞭であるという点に、人間心理の皮肉な一面も込められている

現代においてもこの格言は、記憶力や集中力の議論において示唆に富んでいる。高齢者の記憶力低下は関心の喪失や刺激の減少に起因する部分が大きく、知的関心や目的意識を持ち続けることが記憶の保持に有効であることは、心理学的にも支持されている。キケロのこの言葉は、老年を一律に衰退として見るのではなく、むしろ人間の注意と興味が記憶の根本にあるという真理を、軽妙なユーモアを交えて教えてくれる格言である

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