「すべての人の評判は、その人自身の家庭から生まれる」

マルクス・トゥッリウス・キケロの名言
マルクス・トゥッリウス・キケロの名言

紀元前106年1月3日~紀元前43年12月7日
ローマ共和国出身
政治家、弁護士、哲学者、雄弁家
共和政ローマを代表する弁論家・思想家として知られ、ラテン文学とローマ法の発展に多大な影響を与えた。政治的混乱の中で共和政の理想を擁護し、著作を通じて西洋政治思想と修辞学に大きな遺産を残した。

英文

”Every man’s reputation proceeds from those of his own household.”

日本語訳

「すべての人の評判は、その人自身の家庭から生まれる」

解説

この言葉は、人間の評価や名声は、まず最も身近な存在――すなわち家族や同居人などの「内なる証人たち」――によって形づくられるという、キケロの倫理的かつ社会的洞察を表した格言である。彼は、公の場でどれほど立派な姿を見せていても、家庭内での振る舞いが不誠実であれば、やがてその本性は外にも現れると考えていた。つまり、最も身近な関係こそが人格の真価を映し出す鏡であり、そこからこそ社会的信頼が育まれるという立場である。

キケロのこの考えは、『義務について(De Officiis)』などに見られる、私徳と公徳の一致を重んじる倫理思想と一致している。彼は、公的な徳(正義、誠実、節度)を語る者は、まずそれを家庭の中で実践すべきであり、私生活と公的生活のあいだに偽りがあってはならないと説いた。家庭は最も小さな社会単位であり、そこで培われる徳が人間の信用の基盤を成すという考えがこの格言に込められている。

現代においてもこの言葉は、リーダーシップ、信頼、人格といった概念に深く関係している。たとえば、公職者や経営者が社会的には立派に見えても、家庭内での暴言や無責任な態度が明るみに出れば、その信頼は一瞬で失われる。また、教育の現場においても、子どもが親の姿勢を模倣するように、人の評価は最も近くにいる者の証言によって左右されやすい。キケロのこの格言は、本当の名声とは、内なる円環――家庭や身近な人々との関係――において築かれるべきであるという、時代を超えて通じる倫理的真理を語っている

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