「どれほど堅固に守られていようとも、金で落とせぬものはない」

マルクス・トゥッリウス・キケロの名言
マルクス・トゥッリウス・キケロの名言

紀元前106年1月3日~紀元前43年12月7日
ローマ共和国出身
政治家、弁護士、哲学者、雄弁家
共和政ローマを代表する弁論家・思想家として知られ、ラテン文学とローマ法の発展に多大な影響を与えた。政治的混乱の中で共和政の理想を擁護し、著作を通じて西洋政治思想と修辞学に大きな遺産を残した。

英文

”Nothing is so strongly fortified that it cannot be taken by money.”

日本語訳

「どれほど堅固に守られていようとも、金で落とせぬものはない」

解説

この言葉は、金銭の持つ絶大な影響力を辛辣に描き出し、あらゆる権力・制度・防衛さえも腐敗や買収の前には脆いものであるというキケロの現実主義的洞察を示す格言である。彼は、金銭が人間の欲望や判断を歪め、制度や道徳、さらには軍事的な要塞でさえも崩壊させうる力を持っていると認識しており、それがいかに人間社会において危険であるかを警告している。

この格言の背景には、キケロ自身が体験したローマ末期の腐敗や買収の横行がある。彼は政治家として、選挙における買収、裁判官の買収、軍人や属州総督による搾取などを目の当たりにし、繰り返し「徳より金が重視される社会の危険性」を訴えた。この言葉は、軍事的防備の堅固さよりも、人間の心の脆さに目を向けよという倫理的警句でもある

現代においてもこの言葉は、政治腐敗、経済ロビー活動、不正な利得、買収工作といった現象に鋭く適用される。制度や法律がいかに強固に作られていても、それを運用する人間が金銭に屈すれば、社会の根幹は揺らいでしまう。たとえば、内部告発の封じ込め、選挙への影響工作、企業の安全規制緩和などはすべて金銭によって成される現代的「攻囲戦」である。キケロのこの格言は、金銭の力を過小評価することの危険性と、真の防衛とは外壁ではなく、倫理と誠実さにあることを教えてくれる、時代を超えた警告である

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