「庭と書斎があれば、人は必要なものすべてを手にしている」

マルクス・トゥッリウス・キケロの名言
マルクス・トゥッリウス・キケロの名言

紀元前106年1月3日~紀元前43年12月7日
ローマ共和国出身
政治家、弁護士、哲学者、雄弁家
共和政ローマを代表する弁論家・思想家として知られ、ラテン文学とローマ法の発展に多大な影響を与えた。政治的混乱の中で共和政の理想を擁護し、著作を通じて西洋政治思想と修辞学に大きな遺産を残した。

英文

”If you have a garden and a library, you have everything you need.”

日本語訳

「庭と書斎があれば、人は必要なものすべてを手にしている」

解説

この言葉は、自然との静かな交わりと知への飽くなき探究という、人生における二つの本質的な充足を象徴的に表したキケロの理想的生活観を示す格言である。彼は、外的な富や権力ではなく、内面的な平和と精神の充実こそが真の幸福をもたらすと考えていた。「庭」は自然との調和と心の平穏を、「書斎(図書館)」は知性と精神の養いを象徴している。つまり、自然と知の双方がそろえば、人間はそれ以上を求める必要がないという哲学的満足の境地を表している

この思想は、キケロが晩年に語った著作――『老年について(De Senectute)』や『義務について(De Officiis)』など――に見られる簡素で徳に満ちた生の勧めとも一致している。彼にとって、自然の静けさと読書の知的喜びは、政治的権力や物質的成功に代わる、より高貴で永続的な満足をもたらすものであった。また、この言葉には、公共の喧騒から離れた自律的な生活の理想が込められている

現代においてもこの格言は、多くの人にとって普遍的な理想として響く。都市の喧騒や情報の過剰な刺激の中で、庭の静けさや読書の集中は、心の再生と精神の栄養をもたらす。自給自足的なシンプルライフ、あるいはデジタル・デトックスの潮流とも合致し、本当の豊かさとは何かを問い直す機会を与えてくれる。キケロのこの言葉は、幸福とは外にあるものではなく、自然と知のあいだに見いだされるという、永遠に価値ある知恵を静かに語っている

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