「友情の原則とは、互いに同情し合い、相手に欠けているものを補い合い、常に友愛と誠実な言葉をもって互いの利益を図ることである」

紀元前106年1月3日~紀元前43年12月7日
ローマ共和国出身
政治家、弁護士、哲学者、雄弁家
共和政ローマを代表する弁論家・思想家として知られ、ラテン文学とローマ法の発展に多大な影響を与えた。政治的混乱の中で共和政の理想を擁護し、著作を通じて西洋政治思想と修辞学に大きな遺産を残した。
英文
”The rule of friendship means there should be mutual sympathy between them, each supplying what the other lacks and trying to benefit the other, always using friendly and sincere words.”
日本語訳
「友情の原則とは、互いに同情し合い、相手に欠けているものを補い合い、常に友愛と誠実な言葉をもって互いの利益を図ることである」
解説
この言葉は、友情の本質が単なる感情や親しみではなく、思いやりと誠実な関係性に基づいた相互補完と信頼にあるという、キケロの道徳的友情観を明確に表した格言である。ここでは、友情とは静的な状態ではなく、互いの欠けた部分を補い合い、善意の行動と言葉によって関係を育む能動的な徳の実践であると定義されている。つまり、真の友情は、自己を超えて相手の幸福を願い、そのために努力する心から生まれるという立場である。
この考え方は、キケロの名著『友情について(Laelius de Amicitia)』で一貫して説かれている。彼は、友情は徳(virtus)に基づいて生じるものであり、共に善を求める者の間にのみ成立すると述べた。そしてその関係においては、誠実(fides)と好意(benevolentia)が支柱となり、誤解や利己によって揺らがないことが求められる。この格言にある「友愛と誠実な言葉」は、まさにその倫理的信頼の核心を成す要素である。
現代においてもこの格言は、深く実用的な意義を持つ。真の友情とは、互いに何かを与え合い、支え合う継続的な関係であり、それには丁寧な言葉と行動による配慮が不可欠である。単なる気の合う関係ではなく、困難な時にも相手を思いやる努力や、正直で温かいコミュニケーションが友情の真価を試す。キケロのこの言葉は、友情という人間関係の中に潜む倫理的な美しさと責任を端的に描き出し、時代を超えて人々に友情の意味を再確認させる格言である。
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