「正しく定義された哲学とは、単に知恵への愛である」

マルクス・トゥッリウス・キケロの名言
マルクス・トゥッリウス・キケロの名言

紀元前106年1月3日~紀元前43年12月7日
ローマ共和国出身
政治家、弁護士、哲学者、雄弁家
共和政ローマを代表する弁論家・思想家として知られ、ラテン文学とローマ法の発展に多大な影響を与えた。政治的混乱の中で共和政の理想を擁護し、著作を通じて西洋政治思想と修辞学に大きな遺産を残した。

英文

”Rightly defined philosophy is simply the love of wisdom.”

日本語訳

「正しく定義された哲学とは、単に知恵への愛である」

解説

この言葉は、哲学の語源的意味とその根本精神を簡潔に表現した、キケロによる哲学理解の宣言である。ここでの「philosophy」はギリシア語 philo-sophia(知を愛する)に基づいており、哲学とは特定の学説や体系を信奉することではなく、真理・善・美・秩序といった高次の知恵を探求し、それを愛する姿勢そのものであるという定義が与えられている。つまり、哲学の本質は知識の所有ではなく、知への絶え間ない探求心にある

キケロは、自らの著作――『老年について(De Senectute)』『義務について(De Officiis)』『友情について(Laelius de Amicitia)』など――において、哲学を日常生活に生かす実践的知として重視した。彼は哲学を、抽象的な理論ではなく、人間としてどう生きるべきか、いかにして徳を得るかを考えるための知的道具と見なした。この格言は、哲学の本来あるべき姿――理性と徳への絶えざる志向――を表すものとして、キケロの思想全体の根幹に位置づけられる

現代においてもこの言葉は、学問や教育、思索の意義を再確認させる。哲学は単なる専門知識の蓄積ではなく、人間としてのあり方や社会の在り方を問い続ける「姿勢」である。そしてそれは、知恵に対する謙虚さと情熱の両方を求める行為でもある。キケロのこの格言は、哲学という営みが知識よりも志向に根ざし、「愛する」という情熱をもって真理を追い求めるものであるという、時代を超えた知の原点を力強く語っている

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