「習慣の力は偉大である。それは我々に疲労を耐えさせ、傷や痛みを軽んじることを教える」

紀元前106年1月3日~紀元前43年12月7日
ローマ共和国出身
政治家、弁護士、哲学者、雄弁家
共和政ローマを代表する弁論家・思想家として知られ、ラテン文学とローマ法の発展に多大な影響を与えた。政治的混乱の中で共和政の理想を擁護し、著作を通じて西洋政治思想と修辞学に大きな遺産を残した。
英文
”Great is the power of habit. It teaches us to bear fatigue and to despise wounds and pain.”
日本語訳
「習慣の力は偉大である。それは我々に疲労を耐えさせ、傷や痛みを軽んじることを教える」
解説
この言葉は、人間の精神と身体を鍛え、苦難への耐性を育てる上で、習慣が持つ計り知れない力を称えたキケロの心理的洞察を表している。彼は、痛みや苦しみといった感覚ですら、繰り返しによって慣れ親しむことができ、克服しうるものとなると考えた。つまり、意志や理性だけでなく、日々の鍛錬と慣れこそが、徳や忍耐力を育む基盤であるという認識がこの言葉には込められている。
この考え方は、ストア派やローマ的美徳の影響を受けたキケロの思想と一致している。ストア派では、習慣によって情念(パトス)を克服し、魂の平静(アタラクシア)に達することが理想とされた。キケロもまた、快楽や苦痛に左右されず、理性と鍛錬によって強くなることが真の自由と高貴さをもたらすと信じていた。習慣は単なる反復ではなく、人格を形成し、苦難に打ち克つ「第二の天性」として評価されていた。
現代においてもこの格言はきわめて実践的な意味を持つ。スポーツや芸術、学習、仕事など、困難や痛みに耐える力は、一朝一夕では得られず、継続的な習慣によって育まれる。たとえば、兵士やアスリートが過酷な環境を耐える力は、意志だけでなく、日々の習慣化された訓練によって支えられている。キケロのこの言葉は、人間の限界を超える手段としての「習慣の力」を高らかに称え、それが人格と精神の強さを形づくる根幹であることを教えてくれる。
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