「教える者の権威は、しばしば学ぼうとする者にとっての障害となる」

マルクス・トゥッリウス・キケロの名言
マルクス・トゥッリウス・キケロの名言

紀元前106年1月3日~紀元前43年12月7日
ローマ共和国出身
政治家、弁護士、哲学者、雄弁家
共和政ローマを代表する弁論家・思想家として知られ、ラテン文学とローマ法の発展に多大な影響を与えた。政治的混乱の中で共和政の理想を擁護し、著作を通じて西洋政治思想と修辞学に大きな遺産を残した。

英文

”The authority of those who teach is often an obstacle to those who want to learn.”

日本語訳

「教える者の権威は、しばしば学ぼうとする者にとっての障害となる」

解説

この言葉は、教育の場において、教師の持つ「権威」や「立場」が、学ぶ者の自由な思索や主体的な探求を妨げることがあるというキケロの教育哲学を示す鋭い警句である。彼は、真の学びとは、受動的に知識を受け取ることではなく、主体的に理解しようとする知的活動であるべきだと考えており、教師の絶対的な立場がその精神を圧迫してしまう危険性を警告している

この考えは、キケロの弁論術や哲学における「対話的思考」の重視と一致する。彼は、一方的な教示ではなく、質疑応答や自由な議論によってこそ知識は真に理解され、内面化されると考えていた。したがって、教師があまりに権威的であると、学ぶ者は質問や異論を差し挟むことを躊躇し、自らの思考を深める機会を失ってしまうという認識が、この格言には込められている。

現代においてもこの言葉は極めて重要である。教育、研究、職場、家庭といったあらゆる学習環境において、指導者の「正しさ」や「肩書き」が過度に強調されると、学ぶ者は自分の考えや疑問を表現しにくくなる。特に創造性や批判的思考が重視される時代においては、学ぶ側が主体となって知を探求できる「対等な対話の空間」を築くことが、真の学びを可能にする。キケロのこの格言は、教育の本質が「教えること」よりも「学ばせること」にあるという哲学的真理を、明確に示している

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