「最後の日がもたらすのは、私たちの消滅ではなく、場所の移り変わりである」

紀元前106年1月3日~紀元前43年12月7日
ローマ共和国出身
政治家、弁護士、哲学者、雄弁家
共和政ローマを代表する弁論家・思想家として知られ、ラテン文学とローマ法の発展に多大な影響を与えた。政治的混乱の中で共和政の理想を擁護し、著作を通じて西洋政治思想と修辞学に大きな遺産を残した。
英文
”That last day does not bring extinction to us, but change of place.”
日本語訳
「最後の日がもたらすのは、私たちの消滅ではなく、場所の移り変わりである」
解説
この言葉は、死とは存在の終わりではなく、状態や場所の変化にすぎないという、キケロの死生観を象徴する格言である。彼は、肉体の死を魂の消滅とは捉えず、むしろ魂は他の次元や世界へと移行するという考えを受け入れており、死を恐怖ではなく自然な遷移として捉えるべきだと説いた。この言葉には、死に対する理性的慰めと魂の不滅性への希望が込められている。
この思想は、キケロの著作『スキピオの夢(Somnium Scipionis)』や『老年について(Cato Maior de Senectute)』において繰り返し語られる中心的なテーマであり、魂の存続、宇宙の秩序、自然法との調和というストア派や新プラトン主義的な思想的背景に支えられている。彼は、死を終焉ではなく、より高次の存在への門出として描き、精神の高潔さが死後にも意味を持つと信じた。
現代においてもこの言葉は、死を前にした不安や悲しみへの静かな慰めとなる。科学的には死後の世界が証明されているわけではないが、哲学的・宗教的な視点から「終わりではなく変化」と捉えることは、生の意義を高め、死に対する態度を前向きにする力を持つ。キケロのこの格言は、死を否定的にではなく、変化として肯定的に受け入れることで、人間の生き方そのものを深める古代からの知恵を、今も私たちに伝えている。
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