「人はなぜ気づかぬのか――倹約がどれほどの収入に匹敵するかということに」

マルクス・トゥッリウス・キケロの名言
マルクス・トゥッリウス・キケロの名言

紀元前106年1月3日~紀元前43年12月7日
ローマ共和国出身
政治家、弁護士、哲学者、雄弁家
共和政ローマを代表する弁論家・思想家として知られ、ラテン文学とローマ法の発展に多大な影響を与えた。政治的混乱の中で共和政の理想を擁護し、著作を通じて西洋政治思想と修辞学に大きな遺産を残した。

英文

”Cannot people realize how large an income is thrift?”

日本語訳

「人はなぜ気づかぬのか――倹約がどれほどの収入に匹敵するかということに」

解説

この言葉は、収入の多さだけでなく、支出を抑えることの価値と力を強調したキケロの経済的・倫理的警句である。彼は、豊かさとは得ることによってだけではなく、失わないこと、つまり倹約によっても築かれると見なした。無駄を省くことで得られる利益は、新たな収入を得るのと同等、あるいはそれ以上に人生に安定と自由をもたらすという考えがここにある。

この思想は、古代ローマの伝統的な徳のひとつである「frugalitas(質素・倹約)」に根ざしている。キケロは、財産や贅沢を誇るよりも、節度と倹約を尊ぶべきであると繰り返し説いた。とりわけ政治家や公人にとって、贅沢は腐敗の温床であり、倹約は人格の誠実さを映す鏡であると考えた。つまり、倹約は単なる経済的手段ではなく、道徳的な美徳として位置づけられていたのである。

現代社会でもこの言葉の真理は変わらない。収入の増加が生活の豊かさを保証するとは限らず、消費の習慣や生活の選択こそが経済的健全性を左右する。たとえば、高収入でありながら浪費により破産する人もいれば、慎ましい生活で着実に資産を築く人もいる。キケロのこの言葉は、倹約という見過ごされがちな徳にこそ、持続的な豊かさと自由への鍵があるという普遍的な教えを今も静かに語りかけている。

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