「たとえ冗談であっても、友を傷つけてはならない」

紀元前106年1月3日~紀元前43年12月7日
ローマ共和国出身
政治家、弁護士、哲学者、雄弁家
共和政ローマを代表する弁論家・思想家として知られ、ラテン文学とローマ法の発展に多大な影響を与えた。政治的混乱の中で共和政の理想を擁護し、著作を通じて西洋政治思想と修辞学に大きな遺産を残した。
英文
”Never injure a friend, even in jest.”
日本語訳
「たとえ冗談であっても、友を傷つけてはならない」
解説
この言葉は、友情において尊重と思いやりが最も重要であり、たとえ軽い冗談であっても相手の心を傷つけるような言動は慎むべきであるという、キケロの対人関係における厳格な倫理観を示している。彼は、友情とは信頼と敬意に基づく絆であり、それを損なうような軽率な行為はたとえ悪意がなくとも許されるべきではないと考えた。冗談のつもりでも、相手の尊厳を傷つける言葉は真の友情にはふさわしくないという警告が込められている。
この姿勢は、キケロの著作『友情について(Laelius de Amicitia)』の中でも繰り返し強調されている。そこでは、友情とは道徳と徳に裏打ちされた関係であり、安易な戯れや軽口によってその信頼を損なうことは、徳を貶める行為であると説かれている。また、本物の友とは互いに注意を促し合い、成長し合う存在であり、決して相手を笑いの対象にするようなものではないとされている。
現代においても、この言葉は対人関係の基本的な倫理として通用する。SNSや日常会話での冗談が原因で友情が壊れることは珍しくなく、言葉の軽さが重大な誤解や痛みを生むこともある。特に、親しさゆえに無遠慮な言動を許されると誤解してしまう場面では、このキケロの言葉は重要な指針となる。思いやりと慎みのある言葉こそが、友情という繊細で貴重な関係を守る鍵であることを、キケロは明確に教えている。
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