「自分の生まれる前に何が起こったかを知らぬ者は、永遠に子どものままである」

紀元前106年1月3日~紀元前43年12月7日
ローマ共和国出身
政治家、弁護士、哲学者、雄弁家
共和政ローマを代表する弁論家・思想家として知られ、ラテン文学とローマ法の発展に多大な影響を与えた。政治的混乱の中で共和政の理想を擁護し、著作を通じて西洋政治思想と修辞学に大きな遺産を残した。
英文
”To be ignorant of what occurred before you were born is to remain always a child.”
日本語訳
「自分の生まれる前に何が起こったかを知らぬ者は、永遠に子どものままである」
解説
この言葉は、歴史を学ばないことの重大な欠落を厳しく指摘する警句である。キケロは、過去の出来事を理解することが成熟した市民・思考する人間としての条件であると考えていた。歴史に無知であることは、物事を文脈で捉える力や、判断の根拠を欠いたまま生きることを意味するため、それは未熟な子どもと変わらぬと彼は断じたのである。
この考えは、ローマ共和政の伝統や制度が先人たちの経験の積み重ねであるというキケロの信念にも基づく。彼にとって、歴史を知ることは過去の失敗から学び、未来の判断に活かす知恵を得ることであり、それは政治家や市民にとって不可欠な徳とされた。歴史を軽んじる者は、同じ過ちを繰り返す危険を免れ得ないという哲学的警告でもある。
現代社会においてもこの言葉は深い意義を持つ。歴史教育の軽視や過去への無関心が、極端なイデオロギーや誤った判断を生む要因となることはしばしば指摘される。たとえば、戦争や差別の歴史を知らぬまま語られる軽率な政治的主張などがそれに当たる。キケロのこの言葉は、知識と成熟の基盤としての歴史の重みを私たちに再認識させるものであり、過去を知らぬ者に未来を語る資格はないという厳然たる真理を告げている。
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