「キリストの王国ほど多くの血を流してきた王国は存在しない」

- 1689年1月18日~1755年2月10日
- フランス王国出身
- 哲学者、法学者、政治思想家
- 『法の精神』において三権分立を提唱し、近代憲法や民主主義理論に大きな影響を与えた。啓蒙時代を代表する思想家として、自由と法の支配の重要性を説いた。
英文
“No kingdom has shed more blood than the kingdom of Christ.”
日本語訳
「キリストの王国ほど多くの血を流してきた王国は存在しない」
解説
この名言は、キリスト教世界における歴史的な暴力――とくに宗教戦争、異端審問、十字軍など――を鋭く批判するモンテスキューの宗教観の表れである。ここでの「キリストの王国」とは、単に宗教的な信仰の領域ではなく、キリスト教が政治と結びついたことで形成された制度的・軍事的権力構造を指している。つまり、本来は慈愛と平和を説くべき宗教が、国家や権力と結びつくことで最も多くの流血をもたらしたという逆説が示されている。
18世紀の啓蒙時代において、モンテスキューを含む多くの思想家は、宗教の名のもとに行われてきた暴力や弾圧に批判的であり、信仰と理性の分離を訴えた。モンテスキューは、『法の精神』においても寛容と節度を重んじ、国家と宗教の過剰な結合がもたらす危険性を警告している。この名言は、そうした思想的立場から、宗教が権力と化したとき、それが最も血なまぐさい体制になり得ることを示す鋭い警句である。
現代においても、宗教的イデオロギーが暴力を正当化する手段として使われることは決して過去の問題ではない。この名言は、信仰の名のもとに流された血の重みを忘れず、宗教が人を救うものであるためには、その力が権力ではなく慈愛と理性に基づくものでなければならないという普遍的な警告として響く。最も崇高な理念が、最も恐るべき暴力に変わりうる――この逆説の自覚こそ、啓蒙の知性の真髄である。
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