「俺はよくこう言ってた――『俺は史上最強だ! 俺はイケてる! でたらめ言えば、5ラウンドで倒れるぞ! 蝶のように舞い、蜂のように刺す! 俺はイケてる!』ってな。すると白人の中にはこう言うやつがいた――『あの黒人はしゃべりすぎだ、自慢ばかりしてる』ってさ」

- 1942年1月17日~2016年6月3日
- アメリカ合衆国出身
- プロボクサー、社会運動家、人道主義者
- ヘビー級チャンピオンとして活躍し、「蝶のように舞い、蜂のように刺す」の名言で知られる。リング外でも公民権運動や反戦活動に関わり、スポーツと社会正義の両面で世界的な影響を与えた。
英文
”I would say things like ‘I am the greatest! I’m pretty! If you talk jive, you’ll drop in five! I float like a butterfly, sting like a bee! I’m pretty!’ When white people heard me talking like this, some said, ‘That black man talks too much. He’s bragging.’”
日本語訳
「俺はよくこう言ってた――『俺は史上最強だ! 俺はイケてる! でたらめ言えば、5ラウンドで倒れるぞ! 蝶のように舞い、蜂のように刺す! 俺はイケてる!』ってな。すると白人の中にはこう言うやつがいた――『あの黒人はしゃべりすぎだ、自慢ばかりしてる』ってさ」
解説
この言葉は、モハメド・アリが自らの自己表現のスタイルと、それに対する人種的偏見を率直に語った名言である。アリは詩的な言葉や挑発的なリズムを用い、自分の強さ、美しさ、勝利を大胆に表現することで注目を集めた。しかし、その自己表現が「自信」ではなく「傲慢」として受け取られた背景には、黒人が堂々と自己を誇ることへの社会的違和感や差別意識があった。
「しゃべりすぎ」「自慢ばかり」といった批判は、アリの言葉ではなく、その言葉を発する人物の「肌の色」に向けられていた部分も大きい。同じような発言を白人がすれば「個性的」や「カリスマ的」と受け取られかねないところを、黒人であるアリが語ったことで「不遜」と見なされたのだ。この名言は、言葉の背後にある人種的不公平と、その構造への鋭い批評を含んでいる。
現代においても、誰が語るかによって言葉の受け取られ方が変わる構造は完全にはなくなっていない。アリのこの発言は、単なる誇張ではなく、自己を誇る権利を堂々と主張した者の闘いの記録であり、黒人としての誇りと表現の自由を奪わせまいとする強い意志が込められた、文化的かつ政治的な名言である。
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