「正気の黒人の男も女も、自分の黒人の息子や娘と結婚するために白人の少年少女が家に来るなんて望まないさ」

- 1942年1月17日~2016年6月3日
- アメリカ合衆国出身
- プロボクサー、社会運動家、人道主義者
- ヘビー級チャンピオンとして活躍し、「蝶のように舞い、蜂のように刺す」の名言で知られる。リング外でも公民権運動や反戦活動に関わり、スポーツと社会正義の両面で世界的な影響を与えた。
英文
”No intelligent black man or black woman in his or her right black mind wants white boys and white girls coming to their homes to marry their black sons and daughters.”
日本語訳
「正気の黒人の男も女も、自分の黒人の息子や娘と結婚するために白人の少年少女が家に来るなんて望まないさ」
解説
この発言は、モハメド・アリが1970年代に語ったとされる、極めて率直かつ物議を醸した人種観に基づく名言である。彼は黒人としての誇りを強く持っており、当時のアメリカ社会における人種差別や文化の支配構造に対する抗議の一環として、異人種間結婚に対する否定的な意見を語った。この名言は、愛や結婚の自由を否定するものとして現代的な価値観とは相容れない一方で、歴史的・政治的文脈において理解されるべき言葉である。
アリがこのように語った背景には、アメリカ社会における白人優位の構造と、黒人の文化的アイデンティティの喪失への危機感があった。彼の主張は、個々の恋愛や家族に対するものというよりも、「黒人コミュニティの自己保存」と「文化的独立」を守るための強い立場表明として発せられていた。それは、ナショナリズム的な黒人意識運動(ブラック・ナショナリズム)の影響下にあったアリの思想を如実に反映している。
現代においてこの言葉をそのまま肯定的に捉えることは難しいが、歴史的文脈の中で「どのような立場から、どのような問題意識に基づいて語られたか」を理解することが重要である。アリのこの名言は、単なる排他ではなく、「自分たちの文化と尊厳を取り戻す」という苦闘の中で語られた声であり、人種や歴史、アイデンティティをめぐる根深い葛藤の記録でもある。それは、時代の痛みと信念の両方が宿る、極めて重く、慎重に読み解かれるべき名言である。
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