「私は眠ることに慣れており、夢の中で、正気でない人々が目覚めているときに想像するのと同じことを想像している」

- 1596年3月31日~1650年2月11日
- フランス出身
- 哲学者、数学者、自然科学者
- 近代哲学の父とされ、「我思う、ゆえに我あり」の命題で知られる。合理主義を基礎とする思索と、解析幾何学の創始によって、哲学と数学の両面で大きな功績を残した。
英文
”I am accustomed to sleep and in my dreams to imagine the same things that lunatics imagine when awake.”
日本語訳
「私は眠ることに慣れており、夢の中で、正気でない人々が目覚めているときに想像するのと同じことを想像している」
解説
この名言は、現実と幻想、正常と狂気の境界を問い直すデカルトの方法的懐疑の一節である。彼は『省察』において、夢と現実の区別がつかないことを根拠に、感覚や経験に基づく知識を一度すべて疑うという立場をとった。この言葉は、夢の中での経験が現実と見分けがつかないほど鮮明であることから、目覚めている状態さえも完全に信じてよいとは限らないという哲学的問題提起である。
また、デカルトはこの思考をさらに進めて、「狂人」の世界観も彼らにとっては「現実」であることを認めたうえで、正常とされる我々の認識もまた疑い得るのではないかと問いかける。これは、理性によって裏づけられた明晰判明な真理以外は、信頼の対象とならないという彼の認識論の根本的出発点となっている。
現代でもこの問いは、意識の本質や精神の健康、認知科学、AIにおける現実知覚の問題など、多くの分野に影響を与えている。たとえば、仮想現実や夢のように精密なシミュレーションの中で、人はどこまで「現実」と信じるかという問題は、この名言が示す問いと本質的に同じである。この言葉は、我々の確信がいかに脆弱であるかを思い起こさせ、真理への慎重な探究を促す出発点となる。
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