「結婚は人を、習慣や伝統という運命的なつながりの中に引き込む。そして、伝統や習慣は風や天気のように、まったく予測がつかないものだ」

- 1813年5月5日~1855年11月11日
- デンマーク出身
- 哲学者、神学者、作家
- 実存主義哲学の先駆者として知られ、「主体的真理」や「信仰の飛躍」といった概念を提唱。個人の内面的な葛藤と信仰の問題を深く掘り下げ、近代思想に大きな影響を与えた。
英文
“Marriage brings one into fatal connection with custom and tradition, and traditions and customs are like the wind and weather, altogether incalculable.”
日本語訳
「結婚は人を、習慣や伝統という運命的なつながりの中に引き込む。そして、伝統や習慣は風や天気のように、まったく予測がつかないものだ」
解説
この言葉は、結婚が個人に及ぼす社会的・文化的影響を鋭く描いている。結婚とは単なる愛の契約ではなく、広範な習慣・伝統・社会的期待の束縛の中に入る行為である。そしてその習慣や伝統は、時に理不尽で、時に気まぐれであり、自然現象のように人間の理性では制御できないという比喩が用いられている。
キェルケゴールは、実存主義的な立場から、個人の主体的な選択と自由を重視した思想家である。その視点から見ると、結婚はしばしば個の自由を圧迫する制度的枠組みとして描かれる。人は結婚によって家族や社会の規範に巻き込まれ、「本当の自己」を生きることが困難になる危険がある。この名言は、結婚を否定するものではないが、それが内包する文化的力学の複雑さと危うさを警告している。
現代においても、結婚は依然として様々な慣習や期待と結びついており、個人の自由や価値観との間に葛藤を生む場面が少なくない。たとえば、姓の選択、家庭内の役割、育児の方針などにおいて、伝統的価値観と現代的な個人の意志が衝突することは多い。この言葉は、そうした状況を理解する上で、結婚とは単に二人の関係ではなく、広い社会的ネットワークとの関係性であるという視点を提供している。
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