「私なりにできる限り精査したが、弾劾に値する違反は見つからなかった。したがって、辞任という選択肢は受け入れられない」

- 1913年1月9日~1994年4月22日
- アメリカ合衆国出身
- 政治家、弁護士、第37代アメリカ合衆国大統領
- 外交政策において米中関係の正常化やソ連とのデタントを進めたが、ウォーターゲート事件により辞任した初の大統領としても知られている。冷戦期アメリカ政治の象徴的人物である。
英文
“I’ve analyzed the best I can… and I have not found an impeachable offense, and therefore resignation is not an acceptable course.”
日本語訳
「私なりにできる限り精査したが、弾劾に値する違反は見つからなかった。したがって、辞任という選択肢は受け入れられない」
解説
この発言は、ウォーターゲート事件の進行中、辞任圧力が高まる中で、リチャード・ニクソンが自らの正当性を主張した重要な声明である。彼は、法的かつ道義的な観点から自身の行動を分析した結果、憲法上の「弾劾に値する罪(impeachable offense)」に該当する行為はないと主張し、大統領としての正当な地位を維持する意思を明確にした。
注目すべきは、「I’ve analyzed the best I can(自分なりに最善を尽くして分析した)」という自己評価の言い回しと、「resignation is not an acceptable course(辞任は受け入れられない)」という断固たる態度である。これは、彼がいかにして自己防衛の論理を構築し、正統性の維持と政治的生存を図ろうとしたかを如実に物語っている。ニクソンにとって、辞任は「罪を認めること」と等価であり、彼の政治的信念や人物像に反するものであった。
しかし、この発言からわずか数カ月後、テープ記録の公開と世論・議会の圧力により、ニクソンは辞任を余儀なくされる。したがってこの言葉は、危機の中での抵抗と自己正当化の最終局面を示す象徴的な言葉として歴史に残ることとなった。現代においても、政治指導者が自らの行為の境界線をどう捉え、正当性をどのように構築するかという問いに対し、この名言は制度と倫理の交差点に立つ人間の心理を鋭く描き出す重要な証言である。
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