「もし私が、率直で露骨な発言が多く含まれたこれらのテープを公開すれば、大統領職の機密性は今後常に疑われることになるだろう」

- 1913年1月9日~1994年4月22日
- アメリカ合衆国出身
- 政治家、弁護士、第37代アメリカ合衆国大統領
- 外交政策において米中関係の正常化やソ連とのデタントを進めたが、ウォーターゲート事件により辞任した初の大統領としても知られている。冷戦期アメリカ政治の象徴的人物である。
英文
“If I were to make public these tapes, containing blunt and candid remarks on many different subjects, the confidentiality of the office of the president would always be suspect.”
日本語訳
「もし私が、率直で露骨な発言が多く含まれたこれらのテープを公開すれば、大統領職の機密性は今後常に疑われることになるだろう」
解説
この発言は、ウォーターゲート事件の調査中に問題となったホワイトハウスの録音テープの非公開を正当化するために、ニクソンが述べた論拠のひとつである。彼は、大統領が自由に助言を受け、率直に議論を交わせるためには、その発言内容が守られるという機密性が不可欠であると主張した。つまり、録音テープの公開は一時的な透明性をもたらすが、将来の大統領にとって発言の自由を脅かし、統治能力を損なう恐れがあるという立場である。
中心となるのは、「confidentiality of the office of the president(大統領職の機密性)」という概念である。これは、単に秘密を守るという意味ではなく、自由な議論、真の助言、内部の率直な対話を保証する制度的な保護を指す。ニクソンは、録音テープには「blunt and candid(率直かつ露骨な)」発言が含まれていることを認めつつ、それが文脈を離れて公開されることで、政治的に利用され、信頼が損なわれることへの懸念を示している。
この言葉は、現代における機密保持と情報公開のバランスに関する議論にも通じる。特に行政の透明性を求める声が高まる一方で、統治のために一定の非公開空間が必要であるという現実もある。ニクソンのこの発言は、ウォーターゲートの只中にあって、リーダーシップと制度的信頼の相克を描いた重要な視点を示しており、今日でも統治の本質を問う名言のひとつである。
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