「快楽原則が私たちを駆り立てる目標――すなわち幸福になること――は到達不可能である。にもかかわらず、私たちはそれを追い求める努力をやめることができず、いや、やめることなどできない」

ジークムント・フロイトの名言
ジークムント・フロイトの名言
  • 1856年5月6日~1939年9月23日
  • オーストリア帝国(現在のチェコ)出身
  • 神経科医、精神分析学者、思想家
  • 精神分析学の創始者として知られ、無意識、夢分析、エディプス・コンプレックスなどの概念を提唱。20世紀の心理学、文学、哲学に多大な影響を与えた。

英文

“The goal towards which the pleasure principle impels us – of becoming happy – is not attainable: yet we may not – nay, cannot – give up the efforts to come nearer to realization of it by some means or other.”

日本語訳

「快楽原則が私たちを駆り立てる目標――すなわち幸福になること――は到達不可能である。にもかかわらず、私たちはそれを追い求める努力をやめることができず、いや、やめることなどできない」

解説

この名言は、人間の心理構造に内在する「快楽への欲求」と「現実の限界」との根源的な矛盾を表している。フロイトは、人間が本能的に快楽を追い求める「快楽原則」に従って生きているとしながらも、現実世界はその欲求を完全に満たすことを許さないという厳しい真理を示した。つまり、幸福は本質的に完全な形では達成不可能な理想であるというのである。

しかしフロイトは同時に、人間がこの事実を理解していても、幸福を追い求める努力をやめることができない存在であることにも注目した。この二重性――達成不可能な目標に向かって努力し続けるという構造そのものが人間の精神的営みの根幹であるという洞察は、精神分析のみならず、哲学や文学においても普遍的なテーマである。

現代においても、成功や愛、自己実現といった目標はしばしば完全な満足には至らず、代償や限界を伴う。それでも人はそれらを追い続ける。この名言は、「幸福」という儚くも抗いがたい幻想に向かって歩み続ける人間の姿を肯定的に、かつ冷徹に見つめるフロイトの視座を端的に表している。

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