「私の場合、『天路歴程』は、自分という小さな土塊に手を差し伸べるまでに、千の梯子を降りなければならなかったというものだった」

カール・グスタフ・ユング
カール・グスタフ・ユングの名言
  • 1875年7月26日~1961年6月6日
  • スイス出身
  • 精神科医、心理学者
  • 分析心理学を創始し、元型や集合的無意識の概念を提唱した

英文

“In my case Pilgrim’s Progress consisted in my having to climb down a thousand ladders until I could reach out my hand to the little clod of earth that I am.”

日本語訳

「私の場合、『天路歴程』は、自分という小さな土塊に手を差し伸べるまでに、千の梯子を降りなければならなかったというものだった」

解説

この名言は、ユングが個人の精神的成長や自己理解について述べた深い洞察を示している。ここで引用されている「天路歴程(Pilgrim’s Progress)」は、ジョン・バニヤンの寓話的な宗教文学を指し、精神的な旅や救済への道筋を象徴するものとして使われている。しかし、ユングはその旅を単に高みを目指すものではなく、むしろ自分自身の根源に戻るための降下として描いている。

「千の梯子を降りる」という表現は、自己の幻想やエゴを一つひとつ取り除いていく過程を指している。人間はしばしば自らを偉大な存在と捉えたり、他者に優越するための目標を追い求めるが、ユングはそうした姿勢を放棄し、自分という存在の本質的で謙虚な部分を受け入れることが重要であると説いている。この「土塊」とは、生命の根源であり、人間としての本質や無意識とのつながりを象徴している。

この言葉は、現代社会における個人主義や競争的な価値観に対する反省を促すものである。社会的地位や成功ばかりを追い求めることが空虚に感じられるとき、ユングの言葉は、本来の自分を受け入れ、自己の内面とつながることで得られる充実感の価値を思い出させてくれる。この名言は、謙虚さと自己受容が精神的成長において不可欠であることを強調している。

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