「かつて私は、ブラックホールでは情報が消滅すると考えていた。これは私の最大の誤りだった、少なくとも科学における最大の誤りだ」
- 1942年1月8日~2018年3月14日
- イギリス出身
- 理論物理学者、サイエンス・ライター
- ブラックホールの特異点定理やホーキング放射を発表し、また著作『宇宙を語る』などで科学の普及に貢献した
英文
“I used to think information was destroyed in black holes. This was my biggest blunder, or at least my biggest blunder in science.”
日本語訳
「かつて私は、ブラックホールでは情報が消滅すると考えていた。これは私の最大の誤りだった、少なくとも科学における最大の誤りだ」
解説
この発言は、スティーヴン・ホーキングがブラックホール情報パラドックスに関連して自身の過去の考えを振り返り、科学における重要な進展を認めたものである。かつてホーキングは、ブラックホールがすべての物質や情報を吸い込み、それが完全に消滅すると主張していた。しかし、後の研究や議論を通じて、この考えが量子力学の基本原則と矛盾する可能性があることが明らかになった。
「情報が消滅する」という主張は、ブラックホールがホーキング放射によって最終的に蒸発し、内部の情報が永久に失われることを意味する。しかし、量子力学では「情報保存の法則」が成り立つため、情報の消滅は理論上の問題を引き起こす。この矛盾が「ブラックホール情報パラドックス」として知られる課題となった。
ホーキングは長い間この立場を擁護していたが、2004年に考えを改め、「情報はブラックホールから脱出できる」と主張する新しいアイデアを提唱した。この見解では、ブラックホールのホーキング放射に情報が符号化されており、最終的に失われることはないとされる。この変更は、科学者としての謙虚さと、新しい証拠や議論に基づいて自説を修正する勇気を示している。
この発言は、科学が本質的に試行錯誤を伴うプロセスであることを象徴している。ホーキング自身も、「最大の誤り」として過去の主張を認めることで、科学の進展における柔軟性と誠実さの重要性を強調している。この言葉は、科学がどのようにして間違いを克服し、新しい真実を発見するかを思い起こさせるものである。
感想はコメント欄へ
この名言に触れて、あなたの感想や名言に関する話などを是非コメント欄に書いてみませんか?