「悪とは、人間が具体的なものを抽象化する能力によって生み出されるものである」

ジャン=ポール・サルトル
ジャン=ポール・サルトルの名言
  • 1905年6月21日~1980年4月15日
  • フランス出身
  • 哲学者、小説家、劇作家
  • 実存主義を提唱し、『存在と無』や『嘔吐』を通じて20世紀思想に大きな影響を与えた

英文

“Evil is the product of the ability of humans to make abstract that which is concrete.”

日本語訳

「悪とは、人間が具体的なものを抽象化する能力によって生み出されるものである」

解説

この名言は、サルトルが悪と人間の認知について哲学的に考察したものである。彼は、悪は単に残酷な行動や道徳的な誤りだけでなく、人間が現実の苦しみや痛みといった具体的なものを抽象的な概念として捉えることから生じると考えた。人間は、他者の痛みや苦しみを単なる「概念」や「数値」として捉えることで、その具体的な実態に対する感受性を失いがちである。このようにして、悪行が実際の人間への影響を無視して行われることがある。

また、この言葉には、人間の抽象化が持つ危険性が込められている。戦争や虐殺、差別といった非人道的な行為が、対象を「敵」や「異質な存在」として単純化し、具体的な個人としての価値を無視することで行われることが多い。サルトルは、他者の存在や苦しみを直接感じることができなくなると、容易に非人道的な行為に走りやすくなると考えた。この視点は、現代においても人権や共感の重要性を再確認するうえで参考になる。

さらに、この名言は倫理と共感の必要性についての警鐘でもある。他者を具体的な存在として理解し、その苦しみを抽象的なものとして片付けないことが、道徳的な責任を果たす上で重要であるとサルトルは考えた。彼は、具体的な苦しみや不正義を抽象化せずに向き合うことで、真の共感と道徳的な行動が可能になると主張しており、この言葉は人間関係における深い理解と共感の必要性を強調している。

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