「私は政治的責任を切り離さねばならないと感じた。ダライ・ラマがその重荷を背負うべきではない。だからそれが私の利己的な理由──古きダライ・ラマの伝統を守るためなのだ。政治に関与しないほうが安全なのだ」

ダライ・ラマ14世
  • 1935年7月6日~
  • チベット出身
  • 宗教指導者、仏教僧、チベット亡命政府の元首相・精神的指導者

英文

”I felt we must separate political responsibility. The Dalai Lama should not carry that burden. So that is my selfish reason – to protect the old Dalai Lama tradition. It is safer without political involvement.”

日本語訳

「私は政治的責任を切り離さねばならないと感じた。ダライ・ラマがその重荷を背負うべきではない。だからそれが私の利己的な理由──古きダライ・ラマの伝統を守るためなのだ。政治に関与しないほうが安全なのだ」

解説

この名言は、ダライ・ラマ14世が政治的役割から身を引いた背景と、その哲学的理由を語った非常に重要な声明である。チベット亡命政府の精神的・政治的両方の指導者であった彼は、2011年に自ら政治権限を放棄し、民選の指導者に委ねた。この言葉は、その決断が単なる引退ではなく、ダライ・ラマ制度そのものを長く生かすための戦略的選択であったことを明らかにしている。

「selfish reason(利己的な理由)」という表現は一見皮肉だが、ここでは個人の名誉や地位の維持ではなく、宗教的伝統の純粋性と安全を守るという高い目的を意味している。政治関与が宗教指導者の立場を脅かす危険性を自覚したうえで、精神的リーダーとしての役割に専念することが、ダライ・ラマ制度とチベット仏教の未来を守る道だと考えたのである。

この名言は、現代の宗教指導者や公人にとっても重要な示唆を含んでいる。宗教と政治の距離の取り方、伝統と変革のバランス、そして指導者としての自我の制御といった課題に対し、具体的な行動で応えたこの発言は、権力を手放すという「選択の勇気」と、精神性を守るための戦略的思慮の結晶と言える。

感想はコメント欄へ

この名言に触れて、あなたの感想や名言に関する話などを是非コメント欄に書いてみませんか?

「ダライ・ラマ14世」の前後の名言へ


申し込む
注目する
guest

0 Comments
最も古い
最も新しい 高評価
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る